3.障子・襖そしてガラス・サッシ-日本家屋の良いところ
これまでの2回にわたり、日本家屋の良いところ、1.ひとつながりの空間に、2.縁側はサンルームを書いてきました。
今回は、仕切るもの=「障子」「襖」「木製ガラス戸」「アルミサッシ」について、冬なので断熱性能も交えながらお話ししたいと思います。
ガラス戸から差込む光が障子を透けて和らぎ、襖を照らしています。
陽の動きにより、障子に映りこむ景色も移ろいでゆきます。
□特徴
まずそれぞれの特徴を単純に比較すると以下のようになります。
素材 光 重さ 柔らかさ 断熱性能
「障子」 紙+木 半透過 軽 柔らか 中
「襖」 紙+木 遮断 軽 柔らか 中
「ガラス戸」 ガラス+木 透過 重 柔+固 低〜中
「アルミサッシ」ガラス+アルミ(樹脂)透過 重 固い 低〜高
次にそれぞれの良いところを上げてみます。
「障子」 柔らかい光 雪見障子 様々な格子模様 木の柔らかさ 軽い 取外し可
「襖」 軽くて動く壁 障壁画 取外し可
「ガラス戸」 ガラスの種類に対応 木の柔らかさ
「アルミサッシ」気密 水密 防音 ガラスの種類に対応 耐久性
良いところを性能=カタログスペックとすると「アルミサッシ」が一番高性能です。工業製品であり、良いところを数値化する方法で設計されていますので当然なのですが、一方では残念ながら「障子」「襖」「ガラス戸」の良いところは持ち得ていません。
例えば、「軽さ」や「柔らかさ」は紙や木でできていることにより実現され、「軽さ」の良いところは、動かしやすい、外しやすい、運びやすいということになり、「柔らかさ」の良いところは、受けとる感覚の心地よさにつながります。
また、ガラス戸、アルミサッシはその用いるガラスの性能や透過加減、枚数により性能の良いものになり得ます。
大磯にある古刹「鴫立庵」の鴫立庵室です。鴫立庵は日本の三大俳諧道場の一つ。障子が外と室内を仕切っている、まだガラス戸がない頃の建物です。縁側には雨戸があります。
□断熱性能と快適さ
どれくらいの断熱性能があり、それが室内の保温にどれくらい貢献するかを比較検討する際に参照する、熱の伝わりやすさを表す数値に「熱貫流率(K値)[W/m2・K]」というものがあります。この数値が小さいほど熱が伝わりにくく断熱性能が高いことを表しています。
下に一覧を記載します。
障子 4.8
襖 1.7
木製ガラス戸 6.0
木製ペアガラス戸 3.0
透明ガラスサッシ 6.8
透明ペアガラスサッシ 4.5
土壁 2.6
(ECCJ 省エネルギーセンター資料及び日本建築学会設計計画「住宅の保温設計」より)
ペアガラスサッシと比較して「障子」はほぼ同じ、「襖」は2.6倍、木製ペアガラス戸は1.5倍、の断熱性能があることがわかります。
(アルミサッシも樹脂サッシなど断熱性能の高いものを用いれば、より高い断熱性能は得られます)
さらに、快適さを考えてみると断熱性能以外にも触れたときの感覚、見たときの感覚が影響を与えます。例えば、ガラスは透明なため外の天気を思い起こさせ、触れたときには外の温度が伝わりやすい。窓の外の雪景色がみえると外の寒さが想像できます。障子は視野を遮りますが紙の質感と肌触りがガラスよりも暖かさを感じさせます。
これに、カーテンやロールスクリーン、ブラインドや雨戸などを好みに応じて組み合わせ、光の差し込み具合や断熱性能を調整してゆきます。
三鷹の家では真南に向けて設けたペアガラスサッシにバーチカルブラインドを組み合わせ、季節毎の日射を調整しています。
□重量と取り外しやすさ
それぞれを構成する素材の重さを比較するとどうでしょう。
障子紙 50〜70g/m2
ガラス(厚3mm) 7.5kg/m2
木材 (厚6mm) 1.14〜1.80kg/m2
アルミ(厚1.5mm)4.05kg/m2
障子紙はガラスの1/100〜1/150の軽さであり、それが動かしたときの軽さ、外したときの持ち運びやすさにつながります。ガラスは重さの点からは気軽に外すのは躊躇してしまいます。一方では障子紙よりも耐水性と防汚性・清掃性に優れていますし、なによりも可視光線を透過し、外が見通せるという大きなメリットがあります。
日吉・竹林の家では竹林に面し、木製ペアガラス引戸と大きなFIXペアガラスを入れ、竹林を前面に楽しむことができるようにしています。
□木製ガラス戸
外に面しているガラス戸は木を使った建具を使いたいという要望が沢山の方々からあります。
重厚な木製断熱サッシもありますが、価格が高価なこともあり、普及には至らない状況です。そんな中、職人さんには建具屋さんという職種があり、障子や襖とともに昔ながらの木製ガラス戸もオーダーに合わせて製作してもらうことができます。
三鷹の家の玄関は木製ペアガラスの格子戸です。ガラスにタペストリーフィルムを貼ることで、独特の光の透け方にしています。
「障子・襖」やガラス戸を用いた際の冬の暖の取り方を次回に続けてお話ししたいと思います。
StudioJikkaでは、今まで使われていた和室の障子を残しながらベッドルームにしています。
プロジェクトの写真をより詳しくご覧になりたい際には下記リンクをご参照下さい。
ジェル・アーキテクツHP-House
※お問い合わせ先:ジェル・アーキテクツHP
良いところを残しながらリフォームしたい方、思い出の暮らしを繋ぎながら新しくしたい方、
古い家だけれどどなたかに使い続けて欲しい方、些細なことでもご相談ございましたらご連絡下さい。
写真協力 インテリア誌 DREAM
「DREAM」は1964(東京オリンピック開催)年の創刊以来、およそ50年、「美しく心豊かに住まうために」をテーマに、時代感のあるインテリアとそのマインドを紹介し続けています。
最新号、バックナンバーをお求めの際は編集部までご連絡下さい。
どりーむ編集局
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