« 日本家屋の魅力、楽しさを次世代に繋いでゆくには | トップページ | 講演会のご案内「3万人の町からできるコト」-地域自給を実現する5つの方法- »

2012.01.05

「障子・襖」をとりはずし、ひとつながりの「空間」に-日本家屋の良いところ

 昔からの日本建築の良い点の1つに障子や襖を開け放したり、とりはずしたりすると部屋を広くできるということがあります。
例えば、京都の二条城御殿や農家、古民家や町家にもみられます。それぞれ部屋数や部屋のならび方は個々に異なりますが、「空間」が広がるという同じ特徴を受け継いでいます。

_igp6046_2 先日開催した「日本家屋で珈琲を」では八畳つづき間と縁側の障子と襖をとりはずし、廊下の障子・襖も開け放しました。

 閉めているときと開け放しているとき、そしてとりはずしたとき。「空間」の広がりはどのように変化するか、下の2点の写真をご覧下さい。

 部屋の広さは2倍以上になり、空間の広がりは庭までがひとつながりになることで、さらに広くそして光や気配を取り込むことができます。
これは壁とドアで仕切っている建物では実現できない、障子や襖で部屋を仕切っている日本家屋の良い点です。
また、障子・襖は紙と細い木材で出来ており、ガラス戸や木製引戸と比べとても軽量なため、とりはずしも簡単です。

Img_0652_3 Img_0645

 では実際に季節ごとのうつりかわりにはどのように対応し調整しているのでしょう。
 冬は陽の差し込む時間には障子を開けて日光を室内に取込みながら暖めます。日が暮れてきたら襖・障子を閉めて小さな部屋にすることで、熱を逃げにくくし、断熱効果を高めます。障子を閉めると外が見えなくなりますが、そんなときは、雪見障子を上げて、そこから覗けるちょっとだけの庭を楽しむこともできます。

 春や秋にはガラス戸や障子・襖を日当りや風の具合によって開け閉めをしながら、外の風や光そして気配を室内に取込みながら、一年の半分にわたる暑くもなく寒くもない心地よい気候を存分に楽しむことができます。

 夏は障子・襖をはずし室内の風とおしを良くしたら網戸の出番です。ガラス戸をあけて普段は使わない網戸から風をとりいれたり、時にはガラス戸を網戸に交換することで外からの涼しい風が室内を通り抜けるようにすることもできます。京都の町家では夏になると障子を簾戸に交換するのも同じ方法です。

 虫のいない時期には網戸をしまうことで庭や空、遠くの景色を楽しむこともできます。
網戸は虫の侵入を避けながら通風をとるには適していますが外の景色を楽しむにはすこし気になるものです。そこで網戸をとりはずし仕舞ってしまうのも1つのアイデア。外した網戸は納戸やクローゼットに仕舞うことも出来るのだから。アルミサッシのYOSHIDASOUでも網戸をはずして中庭や空を楽しんでいました。皆さんも使わない季節には網戸を外してみるのはいかがですか?


 私たちがこれ迄に手がけてきたプロジェクトでは「空間」の広がり方を暮らしの場面に合わせて調整できることを常に心がけてきました。
_igp1951_3 _igp1949_4
_igp1407_4 三鷹の家の玄関や、伊勢原の家では引戸を開くこと、閉じることをうまく使いながら季節毎の気候や光のうつろいを楽しめるようにしています。
 引戸で仕切ることは部屋毎の防音性能が劣る、隣室の音が聞こえる、冷暖房が漏れるなど不利なイメージも持たれますが、気配を感じながら過ごすことができる安心感、換気扇を使わず自然に緩やかに換気できるなどのメリットが見えてきます。なによりドアとは異なり引込んだりはずしたりしながら「空間」を広げることができます。
障子や襖など昔ながらの引戸の良い所をみなおして、とりいれることも住まいでの暮らしを豊かにする方法のひとつです。

 次回は、縁側についてお話ししたいと思います。


プロジェクトの写真をより詳しくご覧になりたい際には下記リンクをご参照下さい。
ジェル・アーキテクツHP-House

※お問い合わせ先:ジェル・アーキテクツHP
良いところを残しながらリフォームしたい方、思い出の暮らしを繋ぎながら新しくしたい方、
古い家だけれどどなたかに使い続けて欲しい方、些細なことでもご相談ございましたらご連絡下さい。

写真協力 インテリア誌 DREAM
「DREAM」は1964(東京オリンピック開催)年の創刊以来、およそ50年、「美しく心豊かに住まうために」をテーマに、時代感のあるインテリアとそのマインドを紹介し続けています。
最新号、バックナンバーをお求めの際は編集部までご連絡下さい。
どりーむ編集局

|

« 日本家屋の魅力、楽しさを次世代に繋いでゆくには | トップページ | 講演会のご案内「3万人の町からできるコト」-地域自給を実現する5つの方法- »

Architecture 建築つれづれ」カテゴリの記事

コメント

日本家屋は実用性がありいいなぁ
しかし、悲しい事に自宅に人を集めてイベントをする事が無くなったですね結婚式や葬式まで家を使わなくなりました
悲しいし勿体無い精神はどこにいったのかと思います。

小生は、6年前に家を建てました。家内の希望もあって外観は洋風ですが内部は建具を開ければ部屋続きになり、左官をしているので天井も壁も塗り壁です漆喰に珪藻土を入れて光触媒に変えた自家製の壁です和室の壁は、基礎の堀方で出た粘土を塗り壁(聚楽壁こと海苔土)にしました。

大変長くなってすみませんでした

投稿: マーミ | 2012.01.07 03:08

マーミさん、はじめまして。

先日、イベントを開催した際には若い方からも結婚式、お葬式できるよねとのお話も出ていましたので、この先またすこしづつ変わっててゆくかもしれませんね。

左官のお仕事をされてらっしゃるとのこと、独自の素材やその場所でとれた土を使い、実現できるのはすばらしいですね。
大磯でも5年ほど前に建てられた、内外装とも左官で仕上られたお宅にお伺いしたことがあるのですが、時間を経て味わいが出てきていて素敵でした。クラックがほとんど出ていないのは阪神大震災以降の木造構造の強化によるところもあるとは思いますが、とても腕の良い職人さんに施工頂いたとのことでした。

機会ございましたら、左官のお話もお伺いさせていただければ幸いです。

投稿: ジェル | 2012.01.07 10:34

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「障子・襖」をとりはずし、ひとつながりの「空間」に-日本家屋の良いところ:

« 日本家屋の魅力、楽しさを次世代に繋いでゆくには | トップページ | 講演会のご案内「3万人の町からできるコト」-地域自給を実現する5つの方法- »