Architecture 建築つれづれ

2015.01.04

新年のご挨拶と10周年

あけましておめでとうございます。

ジェル・アーキテクツは新年にておかげさまで10周年を迎えることができました。

沢山の皆さまに支えられながら、住宅や店舗、地域活性化など1つ1つの大切なプロジェクトを実現するお手伝いをさせて頂くことができました。

次の節目を迎えられるよう、さらなる設計力向上と皆さまの「夢」の実現のお手伝いをさせて頂けますと嬉しいです。

今後ともご贔屓賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

ジェル・アーキテクツは今年、金沢に新しいオフィスを設けます。

現在進めています、金沢・東山での町家改修プロジェクトも新年度より工事が始まる予定です。

その様子はブログ「金澤町家改修物語」にてご紹介しておりますので、ぜひご覧下さい。

3月14日には北陸新幹線が金沢まで延伸開業いたしますので、

首都圏でも金沢にご興味を持たれる方が更に増えてくることと思います。

ブログの中では金沢の情報も随時掲載していきたいとおもいます。

金沢の町家のこと、移住や短期滞在などにご興味ございましたら、お問い合わせ下さい。

今年の「大磯うつわの日」は10月23日~25日を予定しております。

うつわ好きの方に沢山ご来場頂けるよう、準備を進めて参りますので

引き続き応援頂けますと幸いです。

本年も宜しくお願い申し上げます。

ジェル・アーキテクツ 北出 健展

Imgp2130

芦屋の家

間口が狭く奥に長い敷地に現代の町家をイメージしながら設計しました。

家族が楽しく過ごす1階にはキッチンや小さなタタミのスペース。

奥の庭との間には、縁側をつくり、光が燦々と降り注ぐサンルームにしています。

突き当たりの樹木は花桃。ひな祭りには綺麗な花を咲かせます。

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2012.07.10

夏になりました。網戸をいれます!-日本家屋の良いところ

Img_1796 漸く暑い日が少しずつやって来ました。
 日本家屋の良いところは、夏には窓を開け放ち、庭の木陰からの涼しい風を部屋の中に取りいれられることです。エアコンに頼らずに涼しく過ごす知恵のひとつです。

 ジェル・アーキテクツでは、使わない季節には網戸をはずして、納戸やクローゼットに仕舞っており、夏になると出してきて、またはめています。
 築年数が経過した日本家屋では網戸がなく、夏をどう過ごそうかと思案される方もいらっしゃいます。
そんなときには、網戸をつくってもらうのはいかがでしょう。レールや溝があるならば木製の網戸をそのレールに合うように採寸して、製作することができます。

Img_1805 では、レールがないときにはどうしたらよいのでしょう。

 昔ながらの日本家屋では、縁側の欄間や水廻りの窓を使いながら、よく換気をすることが涼しい暮らしを実現し、住まいを長持ちさせる秘訣でもあります。でも、実際には網戸のためのレールがみあたらないことがあります。

 実際には、例えば、欄間や洗面所の窓は引違窓ですが、外側の窓の使われていない側のレールに網戸を入れています。片側窓しか開きませんが、日本的なとても無駄のないつくりかたです。

また、京町家の葦戸のように、ガラス窓を網戸に交換することもできます。

Img_1798 網戸のシーズンは蚊のいなくなる晩秋まで続きます。それを終えたら、また清掃して仕舞います。

木のガラス戸だけでなく、アルミサッシでも網戸をはずすととてもスッキリと窓からの景色を楽しむことができます。

網戸がないときはつくってみる、使わないときは仕舞ってみるのはいかがですか。


プロジェクトの写真をより詳しくご覧になりたい際には下記リンクをご参照下さい。
ジェル・アーキテクツHP-House

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良いところを残しながらリフォームしたい方、思い出の暮らしを繋ぎながら新しくしたい方、
古い家だけれどどなたかに使い続けて欲しい方、些細なことでもご相談ございましたらご連絡下さい。

写真協力 インテリア誌 DREAM
「DREAM」は1964(東京オリンピック開催)年の創刊以来、およそ50年、「美しく心豊かに住まうために」をテーマに、時代感のあるインテリアとそのマインドを紹介し続けています。
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2012.04.13

4 三寒四温を感じる-日本家屋の良いところ

 少し間があいてしまいましたが、あっという間に春が訪れました。今年は例年よりも寒さが厳しく、大磯でも雪が降ったり、蹲いの水も固い氷が張ったりしました。立春からはまさに三寒四温の日々がつづき、ようやく桜や桃などの花々が咲き始めました。

Img_1137_2

 今回は日本家屋での冬の暖かさのお話です。前回に障子と襖の断熱性能のお話をしましたが、それに加え、ひととおり過ごしてきた冬の実際の生活とそれにともなって感じる「感覚」のおなはしを交えながら進めたいと思います。

 昨年から日本家屋での暮らしを始めるにあたり、やはり冬は寒く、それをどう凌ぐのが良いかとの思案と覚悟をしていました。まだ寒くなる秋口から、灯油ストーブのセレクトを始めたり、掘りごたつの櫓をどうやって調達するか、(元々掘りごたつがあったのですが、櫓と天板がありませんでした。)たとえ少ないにしても木製ガラス戸のすきま風がどの程度の寒さを感じさせるか、断熱材の入っていない土壁は冷たく、寒さを感じさせるのではないかなど、さまざまな思いを馳せつつ秋を過ごしていました。

Img_1093_2 以前に一度、木製建具の日本家屋で暮らしたことがありました。そこは熊本県阿蘇、阿蘇は九州の真ん中、大磯よりも緯度は南ですが、標高も高く、山に囲まれた高原気候のため冬は降雪や水道管の凍結など、寒さも穏やかとはいいがたいところでした。大磯での冬の暮らしを迎えるにあたり、その記憶のおかげで木製建具のすきま風も予測と覚悟がある程度できていたのは端緒としては良かったのかもしれません。

 それでは、大磯で過ごしてきて感じたこと、そしてその要因をいくつか上げてみたいと思います。
 冬は冷たい水で手がかじかんでしまったり、頬に冷たい風が吹きつけるなど、冷たさ・寒さを連想させ感じさせることが沢山あります。一方で、子供は風の子といったり、炬燵があれば十分だったりと、生命の危険を伴う程の寒さに至らずに過ごすこともできるという側面があります。またそれにより、実感として冬の「季節を楽しむ」ことができるのは良いところです。

Img_0649_2 日本家屋の室内ではどうでしょう。
 空気の寒冷さと室内への日差しの差込み具合が少しずれているおかげで、昼間の縁側には陽の光が燦々と差込み、温かい時間を過ごすことができます。縁側の暖まり具合により、部屋の障子を開けて暖かな空気を導き入れたり、雪見障子を上げて日差しを取入れたりと丁寧に調整することで室内の寒冷さを和らげることもできます。

 日が暮れると雨戸を閉め、障子を閉めることで昼間の暖かさを保ちながら、炬燵をつかい、ときには短時間だけストーブをつけたりと、小さく部屋を仕切ることができるおかげで、ほんの少しの暖房でも寒さが和らぎ、快適に過ごすことができました。

Img_0652_2 すきま風と窓ガラスからの寒さは陽の暮れた縁側では徐々に感じ始めますが障子を閉めることで和らげることができます。窓ガラスがみえることで感じる外の寒さは障子紙の柔らかな白さにより緩和され、障子紙の揺らぎが室内にすきま風が直接吹き込んでくるのを和らげます。

 近年はフリースや薄い羽毛素材など、より軽く、暖かく過ごすことができる衣服も増えてきました。衣服で補うことにより、暖かく保つ範囲をコンパクトにでき、すくない暖房でも過ごすことが可能になってきました。
 実際に暖房に要した電気代は約2,000円/月、灯油はわずかに18Lx2缶と、当初想定の半分以下であったのは嬉しい誤算でした。

 古い日本家屋や古民家を探される際には、部屋の周りに縁側や廊下がぐるっと取り囲み、障子や襖で小さく仕切ることができる、外気に直接面することがない部屋が1つあれば冬にもより快適に過ごすことができます。

 もちろん、イメージされてるいくつかのネガティブな面は本当のことです。
例えば、冬のお風呂は寒いです。それは腰壁や床がタイルの場合は熱容量がおおきいため、ユニットバスよりも湯気による温まり方が遅いためです。
 他にも、廊下や台所の板の間はどうしても床が冷たい。開放式の給湯器は換気が必須である。木製建具で寒さを凌ぐためには雨戸も閉めて断熱を良くする必要があり、そのために早い時間から部屋の中が暗くなります。

 一方で断熱が施された新しい家でも日差しの取入れ方が十分ではない、使っている素材が暖まりにくい、広くそして吹き抜けになっているなどのケースでは、継続的に暖房をしなければ快適に過ごすことができない場合もあります。
 暖房方法は様々ですが、エアコンは風や埃が苦手な方には不向きであったり、電気ヒーターはかかる電気代と比較し得られる暖かさが十分でなかったり、床暖房は暖まる迄に時間が掛かってしまったりと、苦手な側面をもっており、どうしても一長一短があります。
 その不十分さは日本家屋とその暮らしのエッセンスもう一度学んでフィードバックすることで、より低廉に快適に過ごすことができるようになります。

Imgp1423 例えば、三鷹の家では2階の1面を真南に向けて、出来るだけ沢山の日差しを取入れられるようにしました。もちろんガラスはペアガラス。それでも生じるガラスのコールドドラフト(窓で冷やされる冷たい空気の流れ)は吹き抜けから下へ流すことにより、寒さへの影響を少なくしています。

 冷えてきた際に用いる暖房は、床材に厚い無垢のレッドオークを使っていることもあり、床暖房ではなく温水パネルをもちいて、空気を柔らかく暖めるようにしました。

 太陽の恩恵を出来るだけ室内に取り込み、建具で小さく仕切ることでその暖かさを保つ。伝統的でベーシックな方法ですが、またあらためて見直し、取入れてみるのはいかがですか?


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2012.01.27

3.障子・襖そしてガラス・サッシ-日本家屋の良いところ

 これまでの2回にわたり、日本家屋の良いところ、1.ひとつながりの空間に、2.縁側はサンルームを書いてきました。
 今回は、仕切るもの=「障子」「襖」「木製ガラス戸」「アルミサッシ」について、冬なので断熱性能も交えながらお話ししたいと思います。
Img_0614 Img_0590
ガラス戸から差込む光が障子を透けて和らぎ、襖を照らしています。
陽の動きにより、障子に映りこむ景色も移ろいでゆきます。

□特徴
まずそれぞれの特徴を単純に比較すると以下のようになります。
         素材         光   重さ 柔らかさ 断熱性能
 「障子」    紙+木        半透過 軽  柔らか  中
 「襖」     紙+木        遮断  軽  柔らか  中
 「ガラス戸」  ガラス+木      透過  重  柔+固  低〜中
 「アルミサッシ」ガラス+アルミ(樹脂)透過  重  固い   低〜高

次にそれぞれの良いところを上げてみます。
 「障子」    柔らかい光 雪見障子 様々な格子模様 木の柔らかさ 軽い 取外し可
 「襖」     軽くて動く壁 障壁画 取外し可
 「ガラス戸」  ガラスの種類に対応 木の柔らかさ
 「アルミサッシ」気密 水密 防音 ガラスの種類に対応 耐久性

Imgp1423 良いところを性能=カタログスペックとすると「アルミサッシ」が一番高性能です。工業製品であり、良いところを数値化する方法で設計されていますので当然なのですが、一方では残念ながら「障子」「襖」「ガラス戸」の良いところは持ち得ていません。
 例えば、「軽さ」や「柔らかさ」は紙や木でできていることにより実現され、「軽さ」の良いところは、動かしやすい、外しやすい、運びやすいということになり、「柔らかさ」の良いところは、受けとる感覚の心地よさにつながります。
 また、ガラス戸、アルミサッシはその用いるガラスの性能や透過加減、枚数により性能の良いものになり得ます。
Img_0661_3 大磯にある古刹「鴫立庵」の鴫立庵室です。鴫立庵は日本の三大俳諧道場の一つ。障子が外と室内を仕切っている、まだガラス戸がない頃の建物です。縁側には雨戸があります。

□断熱性能と快適さ
 どれくらいの断熱性能があり、それが室内の保温にどれくらい貢献するかを比較検討する際に参照する、熱の伝わりやすさを表す数値に「熱貫流率(K値)[W/m2・K]」というものがあります。この数値が小さいほど熱が伝わりにくく断熱性能が高いことを表しています。

下に一覧を記載します。
 障子 4.8
 襖 1.7
 木製ガラス戸 6.0
 木製ペアガラス戸 3.0
 透明ガラスサッシ 6.8
 透明ペアガラスサッシ  4.5
 土壁 2.6
(ECCJ 省エネルギーセンター資料及び日本建築学会設計計画「住宅の保温設計」より)

 ペアガラスサッシと比較して「障子」はほぼ同じ、「襖」は2.6倍、木製ペアガラス戸は1.5倍、の断熱性能があることがわかります。
(アルミサッシも樹脂サッシなど断熱性能の高いものを用いれば、より高い断熱性能は得られます)

Img_0983 さらに、快適さを考えてみると断熱性能以外にも触れたときの感覚、見たときの感覚が影響を与えます。例えば、ガラスは透明なため外の天気を思い起こさせ、触れたときには外の温度が伝わりやすい。窓の外の雪景色がみえると外の寒さが想像できます。障子は視野を遮りますが紙の質感と肌触りがガラスよりも暖かさを感じさせます。

Imgp1905 これに、カーテンやロールスクリーン、ブラインドや雨戸などを好みに応じて組み合わせ、光の差し込み具合や断熱性能を調整してゆきます。
 三鷹の家では真南に向けて設けたペアガラスサッシにバーチカルブラインドを組み合わせ、季節毎の日射を調整しています。

□重量と取り外しやすさ
 それぞれを構成する素材の重さを比較するとどうでしょう。

 障子紙     50〜70g/m2
 ガラス(厚3mm) 7.5kg/m2
 木材 (厚6mm) 1.14〜1.80kg/m2
 アルミ(厚1.5mm)4.05kg/m2

 障子紙はガラスの1/100〜1/150の軽さであり、それが動かしたときの軽さ、外したときの持ち運びやすさにつながります。ガラスは重さの点からは気軽に外すのは躊躇してしまいます。一方では障子紙よりも耐水性と防汚性・清掃性に優れていますし、なによりも可視光線を透過し、外が見通せるという大きなメリットがあります。

_igp3300_2 日吉・竹林の家では竹林に面し、木製ペアガラス引戸と大きなFIXペアガラスを入れ、竹林を前面に楽しむことができるようにしています。

□木製ガラス戸
 外に面しているガラス戸は木を使った建具を使いたいという要望が沢山の方々からあります。
重厚な木製断熱サッシもありますが、価格が高価なこともあり、普及には至らない状況です。そんな中、職人さんには建具屋さんという職種があり、障子や襖とともに昔ながらの木製ガラス戸もオーダーに合わせて製作してもらうことができます。
_igp1967_2 三鷹の家の玄関は木製ペアガラスの格子戸です。ガラスにタペストリーフィルムを貼ることで、独特の光の透け方にしています。

「障子・襖」やガラス戸を用いた際の冬の暖の取り方を次回に続けてお話ししたいと思います。

12_igp4151 StudioJikkaでは、今まで使われていた和室の障子を残しながらベッドルームにしています。


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2012.01.15

縁側はサンルーム - 日本家屋の良いところ

 今回は、日本家屋には必ずといってよいほどつくられている縁側についてお話ししたいと思います。
 縁側というと、冬の日だまりに座布団をだしてひなたぼっこをしたり、夏には窓を開け蚊遣りを炊いての夕涼みなど季節ごとの暮らしにあわせた楽しみ方があります。

Img_0847□縁側の起源はいつ頃?
 縁側には2種類あり、外のまま軒下にあるものを「濡縁」(ヌレエン)、外とはガラス戸や雨戸で仕切られているものを「榑縁」(クレエン)といいます。榑縁ではガラス戸と室内の障子の使い方次第で縁側が外になったり、室内を広げたりすることもできます。

 濡縁は伊勢神宮の本殿建物の外周にまわっており古代からみられます。住まいには源氏物語絵巻などにも描かれているように、平安時代の寝殿造りの建物にはすでにつくられていたようで、その頃の様式を伝えているといわれる京都御所の建物にもみられます。
 では「くれ縁」はいつ頃からつくられているのでしょう。
縁側の外側に木製雨戸を入れて縁側にまで風雨が入るのを防ぐことはなされていたようですが、ガラスを建具に用いることができる迄は濡縁としての使い方のみでした。

Img_0853 板ガラスは江戸期にもありましたが、当時は輸入品のためとても高価でした。明治18年(1885年)出版の「日本人の住まい」E.S.モース著には障子の低い部分の一部、現在の雪見障子の位置にガラスを用いているとの記載がありますが、大きなガラスを必要とするガラス引戸が使われ始めるのはもう少し後のようです。
 その後、板ガラスの国内生産が始まるのが今からおよそ100年前の明治40年(1907年)からですのでガラス引戸はそれ以降に普及してきたと推察できます。
写真は大磯の代表的な散策地でもある「旧島崎藤村邸」。大正後期から昭和初期に建てられたといわれておりますが、引戸のあるくれ縁があり、ガラスも当時のものが残っています。

Photo□縁側の床下はすぐに外
 縁側の床は板敷きでできており、地面は三和土だったり土間だったりします。外から縁側の下を覗き込むと床板の裏側を見るができたりします。床板のすぐ下には外の空気が流れていて、地面の湿気を室内に伝わりにくくすることで外とも室内とも違う空間をつくりだしているのです。
 縁側の天井は母屋の軒先から伸びる下屋の屋根の板(化粧野地板)の裏側がみえていて、天井と屋根の間には天井懐の空間がなく、やはりすぐに外になっています。
 屋根は銅板葺きでできていて、瓦のように熱を帯びすぎることなく、また、軒先の薄さが建物の外観を軽やかにみせているのです。

Img_0856 Img_0857
 この、屋根も床下もすぐに外になっていることが外と室内との間を取り持ち、季節に合わせ室内の温度や湿度を調整するのに丁度良い働きをしているのです。
 夏には縁側の下の土間は日陰になり日の当たらない地面の冷たさを伝え、木陰の涼しい風を室内に導き入れてくれます。冬には床板が日の光を浴びて暖かくなり、日の差し込みきらない室内の冷たさを緩やかに暖めてくれます。夕方、日差しを取り入れ終えたら障子や雨戸を閉めて室内の暖かさを保ちます。

 また、外から室内への風の流れは、ガラス戸・障子を開けて室内に風を取り入れることで室温を調整したり、換気をしたりするだけではなく、欄間窓を開けて、室内の上部に風の流れをつくることで、屋根側の熱が天井に沿って流れてゆき、私たちが生活している高さまで上部からの熱い熱が伝わってくることを和らげてくれます。コンクリートやボード張りの建物の、夏の日差しが当たり熱くなってしまった天井や西側の壁と比べても輻射熱も少なく快適に過ごすことができます。

□縁側の要素を新しい建物に取り入れる
 このように、縁側は軒の出の深さ、屋根や天井、床の素材をみても快適に過ごすための知恵が沢山含まれているのです。
_igp1349 今、新しい建物を建てるときに、全てを取り入れた縁側をつくることは難しいかもしれませんが、素材や風通しのしかたなど一部を取り入れてみることは、光熱費低減にもつながり、暮らし方を豊かにしてくれる1つの方法といえます。
「伊勢原の家」では2階の個室のまわりに階段~スタディスペースを設け、冬の日差しを室内に取り込んで過ごすことができるようにしました。
_igp3373
「日吉の家」では2階のリビングと書斎のあいだに、大きな屋根の下になるデッキバルコニーを設け、竹林の柔らかな風と光を床からも感じながら過ごすことができます。

 アルミサッシを二重にしたり、断熱性能の高いガラスを用いることは光熱費の節減にはなりますが、生活の豊かさにはつながりません。カーテンやブラインドを楽しむのと同じ感覚で、縁側をしつらえてみたり、その一部を取り入れてみるのはいかがですか。

次回は障子と襖についてお話しできればと思います。

※「榑縁」は縁側の板を敷居と平行に張っている縁側を指し示すコトバでもあります。
  建物に直行する張り方は「切り目縁」といいます。

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2012.01.05

「障子・襖」をとりはずし、ひとつながりの「空間」に-日本家屋の良いところ

 昔からの日本建築の良い点の1つに障子や襖を開け放したり、とりはずしたりすると部屋を広くできるということがあります。
例えば、京都の二条城御殿や農家、古民家や町家にもみられます。それぞれ部屋数や部屋のならび方は個々に異なりますが、「空間」が広がるという同じ特徴を受け継いでいます。

_igp6046_2 先日開催した「日本家屋で珈琲を」では八畳つづき間と縁側の障子と襖をとりはずし、廊下の障子・襖も開け放しました。

 閉めているときと開け放しているとき、そしてとりはずしたとき。「空間」の広がりはどのように変化するか、下の2点の写真をご覧下さい。

 部屋の広さは2倍以上になり、空間の広がりは庭までがひとつながりになることで、さらに広くそして光や気配を取り込むことができます。
これは壁とドアで仕切っている建物では実現できない、障子や襖で部屋を仕切っている日本家屋の良い点です。
また、障子・襖は紙と細い木材で出来ており、ガラス戸や木製引戸と比べとても軽量なため、とりはずしも簡単です。

Img_0652_3 Img_0645

 では実際に季節ごとのうつりかわりにはどのように対応し調整しているのでしょう。
 冬は陽の差し込む時間には障子を開けて日光を室内に取込みながら暖めます。日が暮れてきたら襖・障子を閉めて小さな部屋にすることで、熱を逃げにくくし、断熱効果を高めます。障子を閉めると外が見えなくなりますが、そんなときは、雪見障子を上げて、そこから覗けるちょっとだけの庭を楽しむこともできます。

 春や秋にはガラス戸や障子・襖を日当りや風の具合によって開け閉めをしながら、外の風や光そして気配を室内に取込みながら、一年の半分にわたる暑くもなく寒くもない心地よい気候を存分に楽しむことができます。

 夏は障子・襖をはずし室内の風とおしを良くしたら網戸の出番です。ガラス戸をあけて普段は使わない網戸から風をとりいれたり、時にはガラス戸を網戸に交換することで外からの涼しい風が室内を通り抜けるようにすることもできます。京都の町家では夏になると障子を簾戸に交換するのも同じ方法です。

 虫のいない時期には網戸をしまうことで庭や空、遠くの景色を楽しむこともできます。
網戸は虫の侵入を避けながら通風をとるには適していますが外の景色を楽しむにはすこし気になるものです。そこで網戸をとりはずし仕舞ってしまうのも1つのアイデア。外した網戸は納戸やクローゼットに仕舞うことも出来るのだから。アルミサッシのYOSHIDASOUでも網戸をはずして中庭や空を楽しんでいました。皆さんも使わない季節には網戸を外してみるのはいかがですか?


 私たちがこれ迄に手がけてきたプロジェクトでは「空間」の広がり方を暮らしの場面に合わせて調整できることを常に心がけてきました。
_igp1951_3 _igp1949_4
_igp1407_4 三鷹の家の玄関や、伊勢原の家では引戸を開くこと、閉じることをうまく使いながら季節毎の気候や光のうつろいを楽しめるようにしています。
 引戸で仕切ることは部屋毎の防音性能が劣る、隣室の音が聞こえる、冷暖房が漏れるなど不利なイメージも持たれますが、気配を感じながら過ごすことができる安心感、換気扇を使わず自然に緩やかに換気できるなどのメリットが見えてきます。なによりドアとは異なり引込んだりはずしたりしながら「空間」を広げることができます。
障子や襖など昔ながらの引戸の良い所をみなおして、とりいれることも住まいでの暮らしを豊かにする方法のひとつです。

 次回は、縁側についてお話ししたいと思います。


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2011.12.27

日本家屋の魅力、楽しさを次世代に繋いでゆくには

 近年、古民家や町家といった日本家屋での暮らし方が見直されてきています。また、2階建て、3階建てよりも平屋での暮らしが好まれてきています。そこでの暮らしは懐かしいものであったり、若い人にとっては体験したことのない新しい暮らし方でもあります。

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 この数十年、日本家屋は暗い、寒い、虫が出るなど良くないイメージを持たれ、それとは違う新しい家を建てることがより良い暮らし方のように考えられてきました。一方で地価の高騰により、新しい家を建てるために便利な場所で欲しい広さの土地を手に入れることが困難になりつつあります。近年の狭小住宅ブームはそんな土地への苦労を希望にかえるデザインムーブメントでした。

 そんな中、既に日本の総人口は縮小の時代に入り、東京よりも地方、地方の都市よりも郊外や山間部で暮らす人口は減少を迎えています。一方で東京都心への集中、主要地方都市への集中はこれからも進みます。にもかかわらず、私たちの両親の世代、祖父母の世代が暮らし、育ってきた住まいが建物の寿命を全うする前に壊され、土地は小割りになり、場所や街並の記憶とともに消えてゆきつつあります。ここ大磯でも次第に古い建物が取り壊され、マンションや分譲住宅へと姿をかえてゆきつつあります。

 でも、最小限まで小割りにされてしまった土地たちは私たちの次世代にはもう小割りにできません。将来、何かのきっかけでお隣と一緒に建替えができたり、また他のところに移り住むことができることもあるかもしれません。でもそれはほんの一部。小割りになってしまった土地たち、建物たちとそこでの暮らし方を次の世代が受け継いでくれるのでしょうか?

 良くある例えかもしれませんが、若い頃クルマが好きだった人が今の新しいクルマには魅力がないといいます。懐古的な気分もあるでしょう。もちろん、新しい技術の開発も大事です。でも、最新のデザインや装備、安全性がクルマの魅力を知っている人には必要とされていないときには、新しいクルマと古いクルマを比べ、古いクルマを選ぶこともあり得るのです。すぐ壊れ部品がないといったことも今ではインターネットで世界中から探すこともできます。そのクルマを好きな人同士がつながり、対話を楽しみながらクルマとつきあってゆくこともできます。そしてまた次のオーナーへと受け継がれてゆく、そんな楽しみ方もあるのです。

 住まいも同じです。古い家には新しい家にはない魅力があり、今ではなかなかつくることができないものもあります。それらの気に入ったところ、発見したところを取り入れ、慈しみ、楽しみながら暮らしてゆくことも、豊かな暮らしを実現する一つの方法です。一方で現実の暮らしに即さないところ、古くなったキッチンやお風呂などの設備機器の更新、掃除やメンテナンスのしやすさ、耐震性など今の安全性やサステイナビリティに即していない部分もあります。古いことと新しいことを学び取り入れながら、次に繋いでゆけるような住まいでの暮らしは出来ないのでしょうか。

 私たちはこれまで、新しいものと古いものそれぞれの良いところをクライアント様のご希望や暮らし方に沿いながらご提案、実現してきました。
 これ迄につくり上げてきたものにさらに磨きをかけてゆくために、そして少なくとも半世紀先をみつめられるように半世紀を迎える日本家屋に移転致しました。新しいものと古いもの、それぞれを取り入れながら次に繋いでゆくために、大磯の住まい、暮らしから得られるものとこれ迄に実現したものを交えながらご紹介してゆこうと思います。

Img_0395

写真3点は、大磯邸宅の門、拙宅玄関、都内邸宅の門です。今回は初回ですので、門や玄関の写真を選んでみました。
次回は日本家屋の特徴でもある、襖と障子の続き間についてお話しします。

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2011.06.14

YOSHIDASOUオープンハウス & 村松さちえ照明展のご案内

YOSHIDASOUにあります、ジェル・アーキテクツ オフィスのオープンハウスを開催致します。

7月のジェル・アーキテクツの移転に伴い、今までお借りしておりましたC号室が空室となります。
今後、住んでみたい方、どのような住まい方、使い方ができるか想像してみたい方、YOSHIDASOUに興味があり、一度行ってみたかった方などなど、2日間自由にお越しいただける日を設けました。

今回、照明作家の村松さちえさんの展示受注会も同時開催いたします。
金沢で加賀友禅を学び、和紙をつかった照明器具は1つ1つ手づくりでつくりあげられており、そのデザインと淡い光の加減がとても素敵で、季節やTPOにあわせた着せかえも楽しそうです。

村松さちえHP

オープンハウスの日時
6月25日(土) 26日(日) PM1時〜8時

案内図
京王新線幡ヶ谷駅北口より徒歩6分。 ご不明の際はお電話ください。

面積・賃料:52.21平米/148,000円(管理費込)
設備:エアコン2台/ガスコンロ/NET(CATV8Mプラン無料)/駐輪スペース
8月より入居可です。その他詳細は当日お問い合わせください。

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2011.04.14

YOSHIDASOUのお花見

桜吹雪が舞っています。

_igp3386_2庭の桜の花びらが風にのり、中庭まで舞ってきます。
綺麗です・・・

それにつられて窓ぎわまでゆくと、とおり庭の敷石の上が桜の絨毯になっていました。
ヒメシャラの若葉もいつのまにかひらき始めていました。
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2011.03.30

YOSHIDASOUの春

陽当たりの良い所の桜が先に咲きました。

Img_6317_2YOSIHIDASOUの桜は樹齢50年程でしょうか。YOSHIDASOUの前にあった建物を建てた際に植えたそうです。YOSHIDASOUを建てた際にもそのまま残し、毎年楽しんでいましたが、今年も元気に咲きました。
他にもクリスマスローズやカタバミ、スイセンなどいくつも花開き、ようやく春めいてきました。

ちなみに、YOSHIDASOUは昔の吉田荘の名前を残した通称です。昔の吉田荘から新しいYOSIHDASOUへの記憶を繋ぐように、庭石や、格子戸などいろいろなものを取入れ、また時を刻み始めています。


Img_6311_2今年の春のYOSHIDASOUは2部屋の空きがあります。
1LDK+書斎のメゾネット約52平米、1LDKの約26平米がそれぞれ1室づつ。新宿にも近く、中庭もあり、陽当たり・風通しも良く、静かな環境です。
内見ご希望の方がございましたら、JELL-architectsにご連絡下さい。
募集詳細は東京R不動産HPをごらん下さい。

http://www.realtokyoestate.co.jp/estate.php?n=7078
http://www.realtokyoestate.co.jp/estate.php?n=7556

福島第一原発の状況も予断を許さない状況が続いているようです。多くの方々が状況を改善出来るよう最善の努力をされていることと思いますし、長期間の持続的な
対応が必要となってくるのでしょう。
私たち個々人が出来ることは、被災地の方々のことを気にかけ、出来るだけのバックアップを続けてゆくことです。

Img_6045ついこの間迄は雪も舞う寒い時期でした。写真は入居しているカメラマンさんが玄関につくった雪だるまです。皆さん、季節毎に楽しまれているようです。
季節はうつろいゆきます。また桜は咲きますし、春は来ます!

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