「テーブルに向いて座り、長い切れ込みに頭を、短い切り込みに腕を入れて、「シェアリング」を体験して下さい。」
これは、ある展覧会の展示に記載されているメッセージだ。
間もなく今週末に東京でのデザインのお祭り、東京デザイナーズウィーク、デザインタイド、100%デザインなどが開催される。昨晩、それに先立ち、六本木界隈でいくつかのギャラリー・オープニング巡りをした。訪問前の予想で、ある程度お決まりのものや、無駄足になってしまうものがあることは承知していたが、思いもかけず、想像以上の作品クオリティと影響力をもった展覧会に出会うことができた。
場所は六本木交差点から東京タワー方面へ向かったところにあるAXIS GALLERY。デザイン雑誌AXISの発行元でもあり、私も学生の頃から何度も訪問させて頂いてる。
今回の展示はオランダのマライエ・フォーゲルサングというデザイナーによる。彼女は「食」をテーマとしたデザイナーであり、展示はこれ迄の彼女のプロジェクト・プロダクト及び今回の展覧会のための新たなインスタレーションで構成されている。
その中の一つを紹介しよう。壁にたくさんの折り曲げられたスプーンが整然と張付けられており、その上にナッツなどのシリアル類が各々に1つづつ載せられている。たくさんのスプーンは全体であるものをかたち作っており、シリアル類が関係づけられている。シリアル類は来場者も自分の手に取り、食べることができる。スプーンの曲面には他のスプーンが移り込み、面白い反射風景をつくり出していた。
他にも牛乳やスィーツを用いた展示など、幅広い「食」が表現されている。
日本は「食」に関しては非常に恵まれた社会環境にあるが、普段の「食」がどれほど恵まれているか、「食」の非常に危うく、脆弱な供給体制がどのようなものかを知覚することは非常に困難である。
このことを、とてもコンセプチュアルに、ミニマルに、かつ、キュートに実現されていることに驚きと興味を持たずにはいられなかった。会場につくられた「シェアリング」空間の切れは良く、壁面のイラストレーションはほのぼのと「食」の根源が表現されている。
時間があれば、このブログをお読み頂いた方々にも是非訪れてほしい展覧会だ。
AXISギャラリー
期間:11月9日まで 入場:無料
http://www.axisinc.co.jp/publishing/exhibition/200810.html
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